ここでは、ガイドラインの付録として、LGBTQ+やそれに当てはまるかもしれないと思う方、周囲の方が知っておくと便利なことや理解を深める参考情報を紹介しています。また、本学のキャリアポートフォリオ(CARIO)の拡張版・CARIO-NEXTには主にLGBTQ+を対象にしたシート群(Lワークシート群)がありますので、その対応も記載しています。CARIO-NEXTLワークシート群はBHE及び当Webサイト上でも入手することができます。詳細はこちらに掲載しています。
主に当事者へ
相談員のような専門家に対してであっても、初対面の人に自分の悩みを相談するのは気が引けるものです。なおさらLGBTQ+のことであれば、何をどう話せばよいのかわからず、変なことを聞かれそうで心配という人もいるかもしれません。「CARIO-NEXT L-11 困っていること整理シート」は、相談の前に自分の考えやポイントを整理しておき、スムーズに相談を進めるためのツールです。必要に応じて、必要な範囲で使ってみて下さい(使用は任意で、使う場合もすべてしっかり記入しなければならないものではありません)。
主に当事者へ
LGBTQ+やそれに当てはまるかもしれないと思う人にとっては、「自分がわからない」や「自分についてうまく言えない」という困難がある場合もあります。大学生活は多くの学生にとって多感な時期にあたり、アイデンティティも大きな揺らぎを受けながら確立されていきます。こうした中でよりよい対応や支援を考えるため、自己像や自己意識を明確化する一助として「CARIO-NEXT L-61・62「私を見つめる」シート」を準備しています。自分の持っている要素・持っていない要素を一度整理してふり返ることで、何かの気づきを得て次に行うことの参考にしてみて下さい。このシートは他人に見せない自分用としても使えますし、専門家に相談する際に見せる資料としても使えるようになっています。
主に当事者へ
卒業・修了・退学(または除籍)の後、性別の違和等により氏名を変更した場合は、本学で発行される証明書等に記載される氏名を変更することが可能です。申請には「証明書交付願」のほか、原則初回の申請時には「氏名の変更が確認できる資料(戸籍事項証明書等)」と「申請にあたっての申立書」が必要となります。詳細はBHEまでご相談下さい(学籍がなくなった後でも相談できます)。
奨学金関係(日本学生支援機構奨学金等)の申請書(願書)では、申請先の様式に性別記載欄があるものがありますが、採用後の証明書に性別記載欄はありません。その他の詳細な情報はこちらに掲載しています。
主に当事者へ
学生が本学での短期雇用(大学でのアルバイト)やTAなどでマイナンバー関係の書類を提出する際、通知カードや個人番号カード等に含まれる性別欄及び臓器提供意思表示欄は、その部分を隠してコピーを取った状態で本学に提出できます。
通知カードではなく、個人番号カードを作成するとカード入れフィルムがセットで受け取れます。カード入れフィルムの表面は性別欄及び臓器提供意思表示欄、裏面では個人番号がマスクされています。表面については性別欄及び臓器提供意思表示欄をマスクしたままコピーして提出することが可能です。
主に当事者へ
該当する科目は以下が挙げられます。
- 専用のウェアに着替えが必要な科目(例:水泳、柔道、剣道、ウィンドサーフィン、スノースポーツ、マリンスポーツ、ヨット)
- 用具が男女別の科目(例:シューティングスポーツの弓道、バスケットボール、剣道)
- 他の学生との身体的接触がある科目(例:柔道、空手、ダンス)
- 宿泊を伴う科目(例:キャンピング、スノースポーツ)
- その他、授業内で男女別にグループを作る必要がある科目
主に当事者へ
多目的トイレの設置場所は以下をご覧下さい。本学の多目的トイレは整備時期などにより大きく異なり、男女別の入口の中に設置されたものや、障害のある方に必要な設備が十分でないものもあります。利用する可能性のある多目的トイレは、先に確認しておくことをお勧めします。
● 大学ホームページ → キャンパスマップ
● BHE(アクセシビリティ支援チーム)ホームページ→アクセシビリティマップ
主に当事者へ
LGBTQ+の就職活動においては、カミングアウトして進めるかクロゼットにするか、企業等からの理解をどれだけ重視するかなど、様々な要因が絡んできます。これらは一度書き出して整理することも有効です。「CARIO-NEXT L-51就職活動の前にシート」と「CARIO-NEXT L-52 就職活動先についてのシート」はそのためのものです。必要に応じて活用して下さい。
主に当事者へ
LGBTQ+やそれに当てはまると思う人の就職活動に参考となるのが、LGBTQ+にフレンドリーな企業等を評価した指標です。例えば、一般社団法人work with Prideによる「PRIDE指標」が2016年に策定され、受賞した企業や団体が公表されています(筑波大学も2017年にゴールドとベストプラクティスを受賞し、以降も連続してゴールド等を受賞しています)。この指標では、性的指向や性自認で差別しない方針の明文化や、LGBTQ+とその支援者のコミュニティ形成などが評価対象とされ、その達成状況はLGBTQ+やそれに当てはまると思う人の就職活動において有用な情報となります。
こうした企業や団体は、LGBTQ+だけではなく、すべての多様な人にとって自分らしい生き方を実現するという方針を定めていることも多く、直接の当事者でない人の就職活動にも大いに参考となるでしょう。
2024年現在でPRIDE指標を受賞しているのは大企業や外資系企業が中心ですが、こうした評価指標によらず、個々の企業等で積極的に(ないし当然のものとして)対応している中小企業やスタートアップの例もあります。
周囲の方へ
カミングアウトについて、LGBTQ+やそれに当てはまると思う人々が直面する苦しみとして「自分を偽るというつらさ」がよく挙げられます。例えば合宿の夜、男子学生はどの女子学生に性的魅力があるかといった話に、女子学生はいわゆる「ガールズトーク」に花を咲かせているでしょう。また、「一緒に大浴場へ行こう」と言われたり、同室の学生に「おまえがもし同性愛者だったら夜ここで寝るの怖いな」と冗談を言われることもあるでしょう。職場では「どんな異性がタイプ?」「いつ結婚して子どもをもうけるの?」
など。どれも多数派にとっては何気ないことですが、LGBTQ+やそれに当てはまると思う人が「自分はそうじゃない、私にはつらいんだ」と抗って声を上げるのは難しいものです。カミングアウトはそれを乗り越えて必要とされる側面があります。また、大切な相手に偽りのない本当の自分をさらけ出してよりよい関係を築こうと、本人が積極的に望むこともあります。多数派からすると気にもならないことかもしれませんが、LGBTQ+にとって、カミングアウトは自らの尊厳や生き方をめぐる大問題なのです。
周囲の方へ
LGBTQ+であることをカミングアウトしない人もおり、「クロゼット(クローズド)」と呼ばれます。LGBTQ+であれば全員がカミングアウトしなければならないとかカミングアウトしているということはありません。カミングアウトに伴うメリット・デメリットと、LGBTQ+であることを隠し通すそれとを天秤にかけて、カミングアウトしないという決断をする人もいます。また、クロゼットからカミングアウトに移ることも、またその逆もあります。
マイノリティにとって自分らしさをオープンにして生きるのがまだ容易ではないこと、さらに人間にはそれぞれの多様な生き方があるという当たり前のことを踏まえ、本人の自己決定と情報のコントロールが第一に尊重される必要があるでしょう。
周囲の方へ
2001年のテレビドラマ「3年B組金八先生」では性別違和(性同一性障害)が取り上げられて話題となりました。しかし、カミングアウトのシーンは教室で半ば強制的に行われたり卒業式で衆人環視のなか繰り返されたりと、今であればいくら熱血的な教育としても不適切なものと言えます。LGBTQ+に限らず、マイノリティの支援において支援する側が支援される側にカミングアウトを強要し、秘密とそのコントロールを握るような、非対称の権力関係を作らないように注意する必要があります。カミングアウトと支援はバーターの材料でもありません。
また、共同体でのいわゆる通過儀礼として、人に言えない秘密を告白させて共有するメソッドが用いられることがあります。このようなカミングアウトの強要はその人を自死(自殺)に追い込むリスクが極めて高いアウティングであり、間違っても研修などで行ってはなりません。みんなの前でカミングアウトしたマイノリティは仲間として認めてあげるといった考え方は、既に過去のものです。
主に当事者へ
カミングアウトはする側にとって負担が大きいものです。とりわけ、感情に流されやすかったり、いわゆる「話し下手」の人にとっては、事前に必要な内容を書き出しておくことも有用です。特に、相手に何かの対応を希望する事項については、一度内容を整理するのがその後のためにもよいでしょう。
「CARIO-NEXT L-41「カミングアウトの前に」シート」は、カミングアウトする相手別に内容や要望事項を整理していくようになっています。そのため、相手の数に合わせて、必要な分のシートを記入してみて下さい。
また、カミングアウトに際しては自分に関わる情報のコントロールをどうするかを考える必要もあるでしょう。特に、今日重要度を増しているSNS(ソーシャルネットワーキングサービス)については、どのサービスをどのように使い、どういう人と関わっているのか、「CARIO-NEXT L-42 ネット上での自己情報コントロールシート」で書き出してみて、今後のコントロールについて考えることも意味があるでしょう。
周囲の方へ
LGBTQ+の人々にとって、一般にカミングアウトの負担は非常に大きいものです。また、カミングアウトされた側もどう対応すればよいか迷うことも多くあります。カミングアウトされて戸惑ってはいけないということはありませんが、自分なりに受け止めようとしてもどうしても肯定できないこともあるかもしれません。お互いにとってよりよい方向を目指すために、カミングアウトの内容を一定の形で整理することは有用です。
その一助として、カミングアウトされた側のための「CARIO-NEXT L-81「カミングアウトされたとき」シート」も作成しています。カミングアウトする側にとってその精神的負担が大きいこともあるので、何度も本人に聞くのを避けるべき場合などに活用して下さい。もちろん、このシートを使わなければならないということはなく、あくまで参考です。カミングアウトされた内容は秘密を厳守する必要がありますので(本人から他の人に知らせてほしいという明示的な希望がない限り)、書き留めた情報の管理にはご注意下さい。ただし、BHEのように守秘義務のある相談窓口に相談する場合に活用することは可能です。
また、LGBTQ+でないと思っている人がLGBTQ+の相手に接する際は、受け入れられることと受け入れられないことが細かい項目で出てくるものです。そうした状況を整理するため、「CARIO-NEXT L-84「わかりあえる範囲」シート」を準備しています。
周囲の方へ
LGBTQ+については、メディアや作品で様々なキャラクターが流布しています。しかしそのイメージを個人に当てはめると、善意であってもステレオタイプの押しつけになって本人を苦しめることがあります。その人が何らかのロールモデルを持っていることは時々ありますが、カミングアウトをされた側がカミングアウトを受けて「あなたはテレビに出てくる○○さんと同じだよね」と返すのはステレオタイプになりがちです。よくあるのは、男性同性愛者は女装して女性的な言葉遣いをするも
のだという見方です。
とりわけLGBTQ+の人々は千差万別でそもそも典型例が成立しないのですが、「L・G・B・T」の4種類しかいないとか、明確にそれに当てはまらない人はニセモノだなどと誤解されることもあります。あくまで本人はその人として個別に向き合い、何かのパターンに押し込めて考えない方がよいです。カミングアウトそのものをみんなの前での宣言と見なすのも、メディアによって作られたステレオタイプに属するでしょう。
周囲の方へ
LGBTQ+の人々にとって支援者の存在は心強いものですが、LGBTQ+の多様性は目に見えないところで幅が大きく、ともすると自分をLGBTQ+と思っていない人にとって受け入れにくいこともあります。そのため、支援する側のできる範囲を明確にする必要がある場合もあります。「CARIO-NEXT L-82 アライのシート」はそのためのシートになっています。
LGBTQ+を取り巻く社会的状況は目まぐるしく変化していて、常にアップデートが必要な分野です。使われる言葉もまた、その影響を大きく受けて変化するものです。例えば、10年前には「セクマイ」という言葉が頻繁に使われていたのが、「LGBT」という言葉が積極的に使われるようになったり、それが「LGBTQ+」という言葉に置き換わったりしています。このガイドラインも、初版が公開されてからすでに5年以上の月日が経っています。このガイドラインを改訂するにあたって、携わった人々の中で議論になった言葉の一つに、「当事者」という表現があります。私たちは、LGBTQ+の抱える困難や問題について語るとき、LGBTQ+の人々ばかりに対して「当事者」という言葉を使ってしまいがちかもしれません。このとき、「当事者」とは、いったい誰なのでしょうか。たしかに困難を抱えるのはLGBTQ+と呼ばれる人々かもしれません。しかし、LGBTQ+の直面する困難は社会との関係から生まれることも多いので、この社会に生きる誰もが「当事者」とも言えます。
この改訂版では、当事者という言葉を使う場合もありますが、そのような注意を払いながら作られています。そこには、当事者とは誰なのか、そしてLGBTQ+の人だけでなくみんなで一緒にこの問題を考え改善していきたいという願いが込められています。