Interview #14
Interview #14
“気になる”気持ちが研究の始まり。
モノづくり好きな私が化学の研究者になるまで。
つくば市・筑波大学共同事業
発行:2026年1月
Profile

株式会社クラレ イソプレンカンパニー ジェネスタ事業部 開発部 技術サービスグループ
渡邉 理沙さん
東京都出身。株式会社クラレ イソプレンカンパニー ジェネスタ事業部開発部 技術サービスグループ所属。早稲田大学大学院 先進理工学研究科 応用化学専攻終了(工学修士)。子供のころの習い事はピアノ。中学・高校では陸上同好会と書道サークル、大学ではクラシックギターサークルに所属。休日の趣味は、喫茶店巡りとサイクリング。




業務内容について教えてください。
クラレはさまざまな材料を作っている会社です。私はその中でも<ジェネスタ®>という材料の開発に関わっています。ジェネスタ®はスーパーエンジニアリングプラスチックの一種で、強度が高く、高温にも耐えることができます。
私は開発部に所属しており、入社してから5年間、ジェネスタ®を自動車の部品に使ってもらうためにどのような改良をしたらよいかを研究する、材料開発の仕事をしてきました。そして、今年の夏に、開発部の中でも<技術サービス>という部門に異動しました。ここでは自動車の部品に限らず、ジェネスタ®を利用する幅広いお客様と関わり、技術的な質問に答えたり、使いこなすためのサポートを行ったりしています。
ジェネスタ®は実際にどんなところで使われているのですか?
ジェネスタ®はとても熱に強い素材です。金属も熱に強いですが、部品に用いると、どうしても重くなってしまいますよね。そこで、金属をジェネスタ®に置き換えることで、部品を軽くすることができます。自動車に活用すれば、車体が軽くなり燃費がよくなります。
具体的には、自動車のガソリンが通る配管や、エンジンを冷却するための部品などに使われています。自動車内部はとても高温になる部分が多いので、耐熱性のあるジェネスタ®が活躍します。
それから、ジェネスタ®はパソコンやスマートフォンなどの電子機器の部品にも使われています。部品を作る際、熱いオーブンの中に入れる工程があるため、そこで高温に強い素材が活躍します。
研究テーマやその領域に興味をもったきっかけを教えてください。
小さいころからモノづくりが好きでした。小学校低学年のころは人形遊びに夢中で、人形そのものや着る服、人形の街の建物や家具、乗り物などを作るのがとても楽しかったのを覚えています。
中学生・高校生になると、ドラッグストアなどで化粧品の成分表を見るようになり、化学の構造と化粧品の機能との間に結びつきがあることを知りました。そして、「どうしてそういう機能になるのだろう?その仕組みを説明できるようになりたい!」という気持ちを抱きました。高校での化学の勉強を通して、元素(物質を作る最も基本的な成分)はモノづくりの原点だと感じ、大学でも化学を学びました。そして、化学メーカーであるクラレに就職しました。
研究という仕事において、大変だったことはありますか?
大変だったことは、主に2つあります。
1つ目は、想像以上に体力が必要な仕事だったことです。企業での研究開発では、数十キロ〜トンの材料を扱うこともあり、自分で大きなネジを締めたり、大きな装置を動かしたりする場面があります。また、熱に強い材料を開発するため、多くの作業が高温の場所で行われます。そうした場面で力や体力が必要なことに最初は苦労をしました。
2つ目は、勉強です。私は、大学時代は化学の中でも生物と関連の深い内容を研究していました。そのため、入社後はそれまでと違う分野を研究することになり、材料や自動車の仕組み、加工の方法などを必死に勉強しました。




渡邉さんは、学生のころから理科が得意だったのですか?
子供のころから理科は好きでしたが、実は大学受験のとき、物理にとても苦戦しました。挫折しかけたこともありましたが、「難しいなら基礎からやり直そう!」と思い、中学校の参考書を勉強しなおしたり、学校の先生にわかるまでとことん聞いたりしました。また、文字や式だけでなく、イラストや図を使ってイメージするなどの工夫を行い、なんとか克服することができました。
5年間自動車の部品について研究をされていたとのことですが、渡邉さんは昔から車が好きだったのですか?
実は、この仕事に就くまでは、全く自動車に関心がありませんでした。初めは、「お客様との会話に困らないよう勉強しなければ」という使命感から自動車について調べ始めたのですが、調べていくうちに自動車の動く仕組みが分かるようになり、「自動車って知識の結集みたいだ!」と思うようになりました。それが自分のモノづくりの興味へとつながり、途中から自動車の仕組みを面白いと思うようになりました。
渡邉さんが影響を受けた人物は誰ですか?
両親です。小さいころから、忙しい合間を縫って勉強や趣味に打ち込む二人の姿を見て育ちました。その影響で、私もピンときたものがあれば、まず見に行く、触れてみるなどして、仕事の専門外のことでも普段から積極的に吸収し、視野を広げるようにしています。
大人になっても日々学び続けている渡邉さんに、勉強の秘訣をお聞きしたいです!とくに、あまり興味が湧かない科目の勉強などはどうしたらうまくできるでしょうか?
私は「面白くない」と感じたときこそ「いや、そんなはずはない!」と思い込むようにしています。苦手な人も「いいところがあるはず」と思って視点を変えると長所が見つかることがあるように、勉強もそうして見返すと意外な面白さに気づくことがあります。
研究という仕事において、やりがいや達成感などを感じられる瞬間はありますか。
自分のイメージが形になっていくワクワク感です。また、お客様の「成し遂げたいこと」を実現するためにさまざまな人と議論を重ね、試行錯誤する過程で多様な価値観に触れられるのも面白く、開発の楽しさを感じます。失敗が続いた後の成功からは達成感や自身の成長を感じられ、売上につながり「自分が役に立てた」と実感できたときはさらに嬉しいですね。
研究者としての今後の展望について教えてください。
私はこれまで化学を軸に人生を歩んできたので、その経験と知識を基礎にして、社会に貢献していきたいと思っています。常に最新技術にアンテナを張り、よりよい発明ができる研究者になりたいです。
研究者を目指す若い世代へメッセージをお願いいたします。
学生のみなさんは、今は周囲の人から「こうしなさい」「こうしたほうがいいよ」などと言われることも多いと思います。でも、誰が何と言おうと、自分の「好き」や「気になる」、「楽しい、面白い!」という気持ちを大切にしてください。そして、「これが楽しい!」と感じたときに「自分はどこに楽しいと感じているんだろう?」と考えたり、「これが気になる!」と思ったときに「どこが特に気になるかな?」と掘り下げたりすることが、研究につながっていきます。知りたいと思わなければ研究は始まりません。自分のワクワクする気持ちを大切にし、それを深めていく探究心や粘り強さをもつことが、研究の基本になると思います。サイエンスの理解を深めるべく、一緒に頑張りましょう!